子どもの歯並び矯正(予防矯正)

K1_entry4_rightpic120130917112647.jpg「曲がって永久歯がはえてきた!」「アゴが小さくて歯が入りそうにない。」「受け口で前歯が逆になっている?」
たいてい一番最初に歯並びの異常に気付くのはお母さんです。
虫歯の治療は小さいうちに発見して治せば、簡単に治せますし、子どもたちの負担も少ないです。しかし、大きくなって神経まで進んでしまうと、治療は回数もかかり、子どもたちの負担も大きくなります。実は歯並びも同じなのです。歯並びの異常に早く気付き、早く治療をすれば意外と簡単に治せるのです。逆にそれを放置するとますます悪くなり、治すのに手間がかかるようになります。当医院では歯並びも予防的に治すことが最もよいと考えています。

 

 

1.床矯正(予防矯正)をはじめた理由


私が大学で学んだ矯正学はすべて永久歯に生えかわるのを待って、それから永久歯を抜いて固定式の装置で治療するというものでした。ですから、私が歯医者になったころは「まだ乳歯ですから様子をみましょう」と説明していました。
しかし、虫歯予防に通ってくれる子どもたちを診ていくと、ますます歯並びが悪くなっていく子が多いのです。
せっかく虫歯を予防できたのに歯を抜いて矯正することはとても悲しいことに思われてなりませんでした。
何もせずに、悪くなっていく歯並びをただ診るだけで、虫歯予防だけでよいのだろうか?歯並びが悪くなるのも予防できないだろうか?そう思い始めて、試行錯誤しながら予防矯正(床矯正)にたどり着きました。
お母さんが「おかしい?」と思ったときが治療開始のタイミングです。受け口やアゴがずれている等、顔の成長に大きな影響を与えるようなケ-スは4歳ぐらいから治療を開始することもあります。

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2.なぜ歯並びが悪くなったのでしょう?

ガタガタの歯並びの原因の多くは歯が生える場所が足りないことです。つまり、アゴの成長不足によるものがほとんどです。
歯並びはもちろん大切ですが、歯は並びよりも正しく使うことが大切です。正しく使えばアゴが正しく成長し、歯が並ぶ場所があれば歯はきれいに並びます。そして一番大切な事は正しく噛むことで顔が正しく成長することなのです。当医院では成長期の子どもの場合、永久歯は抜きません。抜歯すると萎縮した顔がもっと萎縮してしまうからです。歯が並ぶのに必要なアゴの大きさに成長することの方が自然だと考えています。

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3.食生活について

顔が成長するためには発育刺激が必要です。それは噛むこと、つまり食事の環境が大切になります。
1.食事中の姿勢が悪い。
2.水分を取りながら食べている。
3.食事の時間(15~30分くらい)が適正ではない。
4.噛む回数が多くなるような食材選びや調理法をしていない。
5.小さく切ってしまって前歯で噛むような大きさの物を食卓に出していない。
この5つの中で思い当たることがあれば、それを改善することが治療の第一歩です。

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4.悪習慣について

1.口がいつも開いている。
2.頬づえをつく。
3.指しゃぶりをしている。
4.爪や唇を咬む。
5.舌の姿勢が悪い。
6.うつ伏せに寝ている。
このような悪習慣は歯並びや顔の成長に悪影響を与えます。しかし、指摘してもなかなか治らないものです。強く言い過ぎると、かえってひどくなってしまうこともあります。大切なのは自覚です。なぜその習慣が良くないのか、しっかり説明をして子どもに自覚させることが大切です。またポカンXやタッチステック、リットレメーターといった器具を使うと効果的です。

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5.矯正治療には2種類あります。

1.バイオセラピ-(生物学的機能療法)
歯並びが悪くなった原因を解決すること、つまり食事の環境を改善すること、悪習慣を治すこと。そうすることで生体バランスを整え、自分で成長し、治ることです。

2.メカニカルな治療
取り外しができる床装置
固定式装置(マルチブラケット)

矯正治療というと装置を使用したものだけを想像しますが、装置は補助的なものです。大切なのはバイオセラピ-だと考えています。

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6.治療期間について

顔の成長の8割が6歳までに行われます。6歳から10歳くらいまでは減速し、10歳から2回目の成長スパ-トが始まり、14歳(女子)、17歳(男子)くらいで成長は終わります。
その年齢の成長に追いつくことが治療だと考えています。
床矯正は患者さんが、いかにがんばって装置を入れてネジを巻くかで治療の進み具合が変わってきます。しっかりがんばれば早く治療が進みますし、そうでないとなかなか治療は進みません。主役は患者さんです。したがっていつまでに治療が終わりますということは言えませんので、目標をたててがんばって進めていきます。

1. 4歳~5歳から始めた場合
6歳までに治療を終えて成長が追いつくのが目標です。

2. 6~9歳から始めた場合
10歳までに治療を終えることが目標です。10歳は2回目の成長スパ-トが始まる時期でもあり、上顎の犬歯が生える時期でもあります。この時期までに治れば比較的簡単に治ります。遅くても小学生までに終われるようにしましょう。

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7.治療の流れ

矯正治療の流れを説明します。
担当の歯科衛生士とともに、口腔機能療法(MFT)、経過観察を行っていきます。
口腔筋機能療法(MFT)とは、舌や口唇および顔面の筋肉など、口のまわりの筋肉を強くして、バランスをよくし正しく機能させるためのプログラムです。


◆矯正検査と治療方針説明◆
口腔内写真、顔写真、全身写真、レントゲン写真の撮影、オクル-ザ-(咬合力検査)、リットレメ-タ-(口唇圧)インジケ-タ-ライン測定、動的バランス検査、歯列模型作成。
以上の検査の後、検査結果と治療方針の説明をします。この回は約1時間かかります。食生活と悪習慣について改善(バイオセラピ-)治療はこの日からスタ-トです。

◆矯正装置の説明◆
取り外しのできる床装置の場合、検査から約3週間後に矯正装置が出来上がります。床装置の調整と取り扱いの説明をします。食事の時、歯磨きの時、話をする授業(国語、英語、音楽)のときは装置をはずします。その他の時間は出来るだけはめるようにします。寝ている時も装着します。小学校低学年の子どもなど、学校につけていけない場合は家に帰ってから装着します。
合計【14時間以上】装着できれば治療は可能です。この時間を下回ると治療が進まなくなりますので、注意が必要です。
これから装置を使った治療もスタ-トです。
固定式の装置の場合は歯に装置を装着します。
ワイヤ-を細い物から太い物に交換していくと、歯並びが整っていきます。装置は取り外しが出来ませんので歯磨きを念入りにしましょう。

◆拡大床装置◆
ネジがついている装置
萎縮したアゴを適正な大きさに拡げたり、前歯や奥歯を動かしたりして、歯が並ぶスペ-スを作ります。1つの装置には1つの役割があります。ネジは5mmくらいまで広がります。6ヶ月以内に巻き切るのが目標です。

◆閉鎖型床装置◆
歯が並ぶスペ-スが出来た後に、歯の並びを整える装置です。ネジはついておらず、ワイヤ-で歯を挟み込むことで歯並びを整えます。


◆機能的床装置◆
アゴがずれている等、舌を噛んでいる癖を治したり、機能を改善するために使用します。食事中にも使用する場合があります。

◆パナシ-ルド(ム-シールド)◆
乳歯からの受け口の治療に使います。舌の位置と唇の筋肉を整えることで、受け口を改善します。これを就寝時に使用します。昼間は10分から15分使用します。

◆固定式装置(マルチブラケット)◆
歯に直接、接着剤で貼り付けますので取り外しは出来ません。最初は、ほっぺたや唇にあたって痛みを感じることがありますが、1週間くらいでおさまります。慣れると話をすることに不自由はありません。ワイヤ-を細い物から太い物に交換することで歯並びを整えていきます。

◆矯正装置の管理(1~3ヶ月ごと)◆
床装置の使用状況をお聞きして、床装置の状態を調べます。固定式装置の場合はワイヤ-やゴムを交換します。
食生活や悪習慣についての指導をします。虫歯と歯ぐきのチェックをして、歯石や歯垢をきれいに取ったり、歯ブラシの練習をしたり、フッ素を塗ったりします。

◆装置を使った治療が一段落したら機能訓練開始◆
装置によって歯並びがきれいになったら、しっかり咬めるようになるために食生活の改善、悪習慣の指導をもう一度しっかり行います。必要な人にはチューブ咀嚼訓練や舌の訓練を始めます。
骨が安定し、機能が安定するまで装置ははずせません。
固定式の装置をはずしたい人は保定装置に切り替えます。
◆矯正装置の卒業◆
歯並びがきれいになるだけでなく、骨が安定すること、きちんと咬めるようになること(オクルーザル検査)、悪い習慣がなくなること、つまり歯並びが悪くなった原因が改まれば治療は終了です。

◆12歳臼歯が萌出まで管理◆
装置を卒業しても、12歳臼歯が萌出完了するまで6ヶ月ごとに虫歯のチェックをしながら生え替わりを管理します。
歯並びに何か問題が起きれば早めに対処します。

床矯正は早期に簡単に治してしまえば、治療期間は短くなりますし、使う装置も少なくて済みます。
装置が少なくて済むということは、治療費も少なくて済みます。
出来るだけ早い時期に治療を終了出来るようにしましょう。少ない装置で簡単に治りましょう。その為には機能を高めることが大切です。機能することで装置による治療を少なくすることができます。
「きれいな顔になろう!」「かっこいい顔になろう!」を合言葉に矯正治療を一緒にがんばりましょう。


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8.最後に

この地域で歯科医院を開業して、今年で28年になります。
その間、約6000名以上の患者さんに対し、虫歯や歯周病の治療、一般臨床医としてできる歯列矯正治療、インプラント治療、入れ歯治療等、その都度考えられるあらゆる方法にて、治療にあたってきました。
痛みを止め、咬み合わせを回復し、口元を綺麗にし、治療後はその状態を維持するために、スタッフと共にメンテナンスに取り組んできました。
しかし、患者さんが希望する治療に対し、副作用が大きすぎて治すことができない場合や、悪くなっていく事を止めることができない症例に時折遭遇しました。
その多くには上、下顎骨の劣成長による反対咬合(受け口)、上顎前突(出っ歯)、叢生(らんぐい歯)が認められました。
原因は発育期の成長過程にあります。乳歯列期、もしくは前歯の生え代わり始める時期に簡単な処置をしてあげることで、大人になって不正咬合でつらい思いをすることのないようにできると考えます。
ボヤの状態で火を消せば、大火事にならないのと同じです。
お母さんがお子さんの歯並びに少しでも異常があると思えば、できるだけ早く、一度お口を診せに来て下さい。もし将来問題になると思われる場合は、その解決策を考えて、説明します。
希望されれば、お母さんとお子さんと協力して治療に取り組みます。この地域のすべての子どもたちが正しい咬み合わせを持ち、きれいな顔、かっこいい顔になってくれることを目標にしています。

林 義豊